民衆がつくった「五日市憲法」を知っていますか?

■開かずの土蔵から発見された、五日市憲法草案
夏休みの一日を秋川で過ごし、帰りに立ち寄った「五日市ほうとう」の店に、
岩波新書『五日市憲法』が売っていたんです。
執筆者はなんと、「五日市憲法草案」を掘り当てた超本人。
まよわず、即買いしました(笑)。
今から50年前の1968年、「開かずの蔵」とされていた青梅の豪農・深澤家の土蔵から、
なぜ五日市憲法が発見されたのか――?
へぇぇ!というエピソードが満載で、ワクワクしながら読み進めました。

新井勝紘著『五日市憲法』(2018年、岩波新書) 憲法カフェのテキストにいかがですか?

■憲法が、私たちの手の中にあった時代
NHK大河ドラマ「西郷どん」のちょっと後、日本にまだ憲法が無かった幕末維新期に、全国各地で、民衆による「憲法草案」が作られていたことをご存じでしたか?
「政府の権力を縛る憲法を、民衆の手でつくろう!」
自由民権運動が盛り上がった1880年代。
運動を支えた草の根組織「民権結社」が全国に2100もつくられ、民衆の手掛けた憲法草案は、全国各地にその数なんと102種!だそうです。
市井の人びとが、日ごと夜ごとに、新しい国家のかたちを自分事として、熱く語り合っていたことに驚かされます。

なかでも五日市憲法は、農民や教師、町長、旧士族など多様な階層の人びとによって手がけられたこと、他の草案に比べてオリジナリティが高く、とりわけ基本的人権と地方自治の思想が色濃いのが特徴です。

■日本国憲法の主語は、私たち一人ひとり
「民権なる者は果して欧米の新輸入物にして、我国に於ては古来一片の種子だも無きか?」
これは五日市の若きリーダー、深沢権八さんのメモに書きとめられた言葉です。
自由と主権を願う我らのルーツはどこにあるのか?
すべては欧米の真似事なのか? いや、そうではないはずだ。
この国の民衆によって播かれた民権の種が、今の時代の私たちに受け継がれてきたのだ――。
五日市憲法を作った、名もなき民たちはそう確信していました。
「日本国憲法はアメリカの押し付け憲法だ。政治の力で是正する」などと息巻いている、アベ政権の関係者たちに聞かせたい言葉です。

佐五兵衛の「五日市ほうとう」もオススメですよ~♪

日本国憲法の主語は、かつても今も私たち。
改憲するかどうかを決めるのは、為政者ではない。
私たち国民一人ひとりなのです。
(生活クラブ情報誌『view』2018年10月号掲載)