ヤングケアラーを知っていますか?――当事者の声を聞き、感じたこと

当初はつらいと思っていなかった。
「大丈夫?」と聞かれれば、「大丈夫」と答えていた。
でも、誰にも相談できなかった――。
「ヤングケアラー」という言葉が、少しずつ周知されるようになって、
「あ、もしかしたら自分も『ヤングケアラー』だったのかもしれない」
と気づく子どもや若者が増えている、といいます。
そのことでやっと救われた子や、自分と家族の状況を見つめ直せた子も多いそう。
今日の学習会でお話を伺った、宮﨑成悟さん(ヤングケアラー協会代表理事)もそうでした。

時間の経過とともに重くなる「ケア責任」
15歳の時に母が体調を崩し、買い物や病院の付き添いなど、軽微な介護が始まった宮﨑さん。
症状はだんだんと重くなり、17歳の時に完治しない難病であることが分かってからは、母の精神的なケアも必要となっていきました。
大事な家族を気遣うのは、当たり前のこと。
ただし介助が重度化し期間が長期化するほど、ケアの中身は年齢に不釣り合いなものとなっていきます。
気づけば、気兼ねなく友だちと遊ぶことも、愚痴を言うことも、誰かに甘えることもできなくなっている――それがヤングケアラーの多くに共通する特徴であり、難しさです。

18歳を過ぎたからこそ深まる苦悩

ヤングケアラーとは一般的に、家族の介護やケアや身の回りの世話を担う「
18歳未満の子ども」とされています。
ただし、18歳になったからといって、介護が終わるわけではありません。
宮﨑さんのお話で印象的だったのは、18歳を過ぎても悩みが消えることはなく、むしろ孤立や負担が高まることもあった、という言葉。
進学、就職、結婚…。
人生の分岐点を迎えるたびに、家族への罪悪感から自分の人生を諦めるヤングケアラーが多いことを実感させられました。
国は2022年度予算に初めて、ヤングケアラー支援体制強化事業として「実態調査・支援研修の推進」「支援のパイプ役となる『ヤングケアラー・コーディネーター』の配置」「家事支援・傾聴による相談支援」等の予算を計上しました。
大きな前進ですが、これらメニューですべてのヤングケアラーが救われることはないでしょう。
「介護で疲れ果て、授業の単位を落としてしまった」
「定期考査が受けられず、先生に相談したものの救済策は設けてもらえなかった」

などの声からは、高校や大学の理解と寄り添いがもっと必要だと感じます。

すべての子ども・若者に万能な策はないけれど、一人ひとりに静かに寄り添い、その思いを聞き取ることで、できることはきっとある。
その子を気にする人が増えれば、できることはもっと広がる。
そんな思いを新たにした学習会でした。