税金を滞納したこと、ありますか?

じつは、ずっと気になり調べていることがあります。
税金を滞納するとどうなるのか。
明日の生活費にさえ困っている人が、滞納者の中にいるのではないか――。

コロナによる経済危機は、リーマンショックをはるかに凌ぐと言われています。
すでに市役所の窓口には「市税や国民健康保険料が払えない」「納付を猶予してほしい」という相談が数多く寄せられているそうです。
相談者に対し、市は分割納付を勧めたり、無理な取り立てで生活を著しく窮迫させるおそれがあると判断すれば、執行停止も行います。
では、自分から相談にも行かず、滞納を放置していた人はどうなるのでしょうか。

知らされなかった、差し押さえの事実
「市役所からは、督促の手紙が届いていました。でも、平日は朝から夜まで仕事に追われ、とても市役所に行って相談する余裕がありませんでした。同居の家族が多重債務を抱えていて…。自分の給料はすべて生活費に充てざるを得ず、税金を支払うだけの余裕がなかったんです。ある日、差し押さえの通知が届き、給与が入ったばかりの銀行口座から、滞納金が全額引き落とされていました。追加の延滞金とともに…。あまりのショックで、誰にも何も言えなかった。もうだいぶ前の話なのに、あの時の差し押さえ通知はいまだに捨てられず取ってあります。」

これは親しい知人から、先日はじめて聞いた話です。
一番大変だった時に力になれなかったことにショックを受けると同時に、滞納や多重債務などお金の悩みは、人に相談しづらい悩みなのだと、改めて痛感させられました。

滞納から差し押さえまでの流れ――西東京市の場合
行政は、税金や保険料が滞納されると督促の通知を送付します。
うっかり納付を忘れたまま期限を超えてしまった人の多くは、ここで滞納に気づき、支払いを行います。
西東京市では、忙しい市民が手続きをしやすいよう、コンビニ納付やペイジー、クレジットなど多様な納税手段を整えています。
それでも滞納が続くようなら、行政は電話や訪問による催告を行います。
もし、前述の彼女がここで電話につながることができていれば、分割納付や、もしかすると家族の多重債務についても相談できていたかもしれません。
しかし実際は、一度も電話で話すことなく差し押さえられるケースが増えています。

滞納者数は減少し、差し押さえ件数が増えている
2015年度の市税滞納者数は10,130人。うち、差し押さえ件数は721人。
2016年度の市税滞納者数は7,167人。うち、差し押さえ件数は789人。
2017年度の市税滞納者数は8,594人。うち、差し押さえ件数は935人。
2018年度の市税滞納者数は8,022人。うち、差し押さえ件数は1,182人。
2019年度の市税滞納者数は6,624人。うち、差し押さえ件数は1,121人。

滞納者数は減少しているのに、差し押さえ件数は増えている――それが、ここ近年の西東京市の特徴です。
徴税担当者が滞納者を放置せず、督促、催告、財産調査を全件に対して行い、しっかりと債権を管理しているからです。
市税は西東京市の貴重な基幹収入であり、滞納を放置するわけにはいきません。
担当者のたゆまぬ徴収努力、なかでも時効による不納欠損額を大幅に削減してきたことは、わたしも高く評価しています。
2019年度の市税の徴収率は98.6%、合併後最高の実績となりました。

滞納から「生活困窮のSOS」をキャッチできるか
一方で、滞納から見えてくる生活困窮のSOSを見逃さず、市民の生活再建につなげる行政であってほしい。
コロナ禍の中で、そのことをいま強く思っています。
来年度の税収は大幅に落ち込むことが予想されています。
それにくわえて市税や固定資産税等、国民健康保険料、介護保険料、保育料、学童育成料を滞納する市民が、例年以上に増えるおそれがあります。
複数の債権を抱えているのに相談にも来ない市民の中には、さまざまな事情を抱え困窮している市民がきっといるはずです。
そうした市民の「困窮のシグナル」をキャッチできる感度が、コロナ禍の自治体に求められているのです。