ヤングケアラーを知っていますか?

家族の介護に身をすり減らす若者たち

「ヤングケアラー」という言葉を聞いたことがありますか? 本来であれば大人が担うような家族の介護や世話をすることで、自分自身の人生に支障をきたしている18歳未満の子どもたち。
そんなヤングケアラーは、実は私たちの身近にいます。

「16歳の頃からずっと、寝たきりの母を介護しています。介護に追われていたし、経済的にも苦しかったので、大学は退学。介護離職も経験しました。〝孤立させない″って言うけど、じゃあ、どうすれば自分は孤立しないで済んだんですかね。」
年末に参加したケアラー支援フォーラムで、同じグループになった若い男性がそうつぶやきました。私は、返す言葉もありませんでした。

「いよいよ始まる!!ケアラー支援条例」をテーマに、ワークショップ (2019.12.7)

 

「支える人を支える」ための制度が無い

介護保険制度の開始から20年。要介護者に対する支援は、一定程度、充実してきたものの、介護をする人(ケアラー)を支える制度、法律は、この国にはまだ存在しません。
一方で、ケアラーは高齢者介護にとどまりません。障害のある子ども・親を支える家族、不登校やひきこもりを支える家族、精神の病を抱える親を支える子ども――それらはみな、ケアラーです。核家族化、家族の多様化が進む中、家族の介護を自己責任とするだけでは、格差と困窮はますます進む一方です。支え手の犠牲を当然のこととしない、「支える人を支える」制度づくりは、急務の課題です。

「相談していいことなのかすら、分からなかった」
「自分が『ヤングケアラー』だったんだと知って、救われた。自分だけじゃなかったんだと納得できた」と言っていた若い女性の言葉が、とても印象的でした。
家族の入院費が工面できなくても、バイトのせいで学業不振に陥っても「誰にも相談できなかったし、相談していいことなのかすら分からなかった」と振り返る若者たち。
「ヤングケアラー」と名付けたことで、問題がようやく可視化されたのです。

子ども時代に、家族のことや自分の悩みを相談できる先があったなら、彼らの不安は少しは解消できたでしょうか。
当事者同士、悩みを出し合える場があったなら、彼らの心は少しは軽くなったでしょうか。

介護する人がつぶれてしまわないように、「支える人を支えられる」しくみの制度化に向けて、当事者の声を聴きながら、ともに議論を深めていこうと思います。