不登校の子どもと親を追い詰める「西東京ルール」
不登校の親子を苦しめる「西東京ルール」
西東京市には、虐待の早期発見を目的とした「西東京ルール」があります。
2014年に市内で起きた中学校生徒の虐待自死事件を止められなかった教訓から、教育委員会が定めたルールです。
このルールが、図らずも、不登校の子と親を追い詰めている現実があります。
そのことを、教育長をはじめとする学校関係者に知らしめ、対応を改善してもらいたい。
そのような思いで12月議会で取り上げました。
5日連続欠席した児童生徒は、担任が必ず安否確認
「西東京ルール」は、2015年から市内すべての小中学校で運用されています。
①児童生徒が3日連続欠席したら、担任が管理職に報告する
②5日欠席したら、担任が家庭訪問し、本人を確認する
③7日欠席しても本人を確認できなければ、教育委員会とともに家庭訪問し、緊急性のある場合は子ども家庭支援センター、犯罪が疑われる場合は警察に連絡する
④10日目以降は、児童相談所や警察に届け出る
虐待のせいで学校を長期欠席していた生徒を、教師が両親の言葉をそのまま信じて不登校と認識し、安否確認することなく自死に至らしめた教訓から、「連続5日欠席した子どもを、担任が家庭訪問し、安否確認する」ことが義務付けられています。
「私が学校に、虐待を疑われている…?」
一方の不登校には、いくつかの段階があると言われています。
とくに、学校に行けたり、行けなかったりの五月雨登校を繰り返す「行き渋り期」から、完全不登校に差し掛かったばかりの「混乱期」は、子にとっても親にとっても非常に苦しい時期です。
そして西東京ルールが発動するのが、まさにこの時期なのです。
「5日連続で欠席した際に、担任から『西東京ルールがあるので、お子さんを確認しないといけない』と言われ、まるで脅しのように感じた」という保護者の方は、子どもの状況を受け止めきれず苦しむ中、学校に虐待を疑われたことで、二重の苦しみを味わいました。
心身に不調が出ていたお子さんは、担任の訪問を受け、緊張して手が震え体が冷たくなり、食事を摂れなくなりました。
「決まりだからと言われて従ったものの、なぜあの時、子どもの気持ちを一番に考えてあげることができなかったのか…」親御さんは今でも、その時の対応を後悔しているそうです。
不登校対応と安否確認は切り分けて運用を!――12月議会の質疑から
虐待の早期発見のためとはいえ、西東京ルールを不登校の子どもに一律に適用することには弊害があります。
安否確認と不登校対応とは、切り分けて運用すべきなのです。以下、質疑の概要です。
かとう 西東京ルールが、単なるマニュアルとして形式的に取り扱われているのであれば問題だ。安否確認と不登校対応は、切り分けて運用すべき。教育長の見解は。
教育長 西東京ルールに基づく連絡に、虐待を疑われているのではないかとストレスを感じる保護者がいることは認識している。児童生徒の安全を最優先に考え、西東京ルールに基づく対応を今後も行っていくが、保護者との信頼、連携につながるよう十分なコミュニケーションを図るよう、校長会を通じて指導、助言する。
かとう 担任の先生の対応が不登校の一因となっているケースもある中で、その担任から虐待を疑われたとなれば、決定的に信頼感は壊れてしまう。校長会に指導、助言するというが、具体的にどのようにしていくのか。
教育部長 根本的な原因は、コミュニケーション不足によるもの。様々な背景があるご家庭、児童生徒がいることを改めて認識した上で、丁寧なコミュニケーションを取るよう指導したい。
かとう ぜひ、マニュアル通りではない対応をお願いしたい。担任とうまくいっていない場合は校内委員会など学校がチームとなって対応してほしいし、学校とうまくいっていない場合はスクールソーシャルワーカーなど外部支援を入れる契機として、訪問の機会を活用してほしい。
保護者からは、連絡帳による欠席連絡が辛いとの声も聞かれる。近隣の同級生等に連絡帳を預ける現在のやり方は、双方の負担感やプライバシーという点からも、時代に見合うやり方へ変更すべきだ。すでに一部の学校では、メールを通じた欠席連絡も導入されている。こうした手法を全校に拡充することはできないか。
教育長 メールを活用している学校があることは認識している。デジタル化の利点を生かし、効率的な業務遂行や保護者負担の軽減につながるよう、校長会と連携しながら研究してまいりたい。
当事者の方々からいただいた声をもとに臨んだ質問でした。
今回のやり取りが学校現場の隅々にまで行き届き、不登校の子どもと親が孤立感をこれ以上深めることのないよう、心から願っています。