ひきこもりの当事者が安心できる居場所づくりを
高齢化、長期化するひきこもり
「80代の親が認知症になり、50代のひきこもりの息子が発見された」というケースが、市内でも増えています。誰にも相談できず、世間に対し子の存在を隠し続けてきた家族と、社会とのつながりを持たず見えない存在とされてきた当事者。
ひきこもり問題から見えてくるのは、孤立する家族の姿。「8050」に至る手前で、当時者や家族を、まずはしっかりと相談支援につなげていくことが、行政の急務の課題です。
失敗しても再チャレンジできない社会
ひきこもりは今に始まった現象ではありません。2000年代初頭には、「ひきこもり=若者の問題=就労支援による解決」というシナリオが描かれ、全国各地に若者サポートステーションがつくられました。しかしその失敗は、ひきこもりの長期化と高齢化を見れば明らかです。
不登校だった人、いったん就職したもののつまづいてしまった人――ひきこもりになる理由は様々です。本人たちが自らの思いを語らないため、正しい当事者理解は進んでいません。最近では練馬区でのひきこもり長男殺害事件に見るように、世間の眼差しも厳しくなっています。しかし私には、競争原理の強い社会、失敗すると再チャレンジすらできない社会が、ひきこもり問題の根底にあるのでは、と思えてなりません。
ひきこもり当事者が安心できる居場所づくりを
ひきこもり支援の専門職は、「今のままで良いと思っている当事者は、一人もいない」と言います。何もしていないように見えても、多くの当事者は「このままではダメだ、でもどうしていいか分からない」と、延々と自問自答しています。まず必要なのは正しい当事者理解と、当事者が安心できる居場所を家の外に少しずつでも広げていくことではないでしょうか。
西東京市では「ひきこもり・ニート対策事業」として、若者の居場所「We」が運営されています。10年前に生活保護のケースワーカーが立ち上げた市の独自事業で、他人と関係を築きにくい当事者の間にコーディネーターが立って調整を行いながら、自発的な活動を促し、新たな一歩を踏み出すことを支えています。他市に誇れる取り組みである一方、利用者増によりすでに手狭であること、居場所としての選択肢がないことを考えると、「第2のWe」を検討すべきタイミングなのではないかとも感じています。
社会に傷つき、他者と信頼関係も築けぬまま長期にわたり孤立している人たち。
地域にいてもなかなか見えてこない当事者にどう寄り添うことができるのか、これからも考え続けていきたいと思っています。